「やってくれる会社が見つからない」
——誰も手を挙げなかった大規模
業務システム移管を、完遂した。
企業再編に伴い、新会社立ち上げを支える業務システム移管プロジェクトが動き始めた。しかし既存システムには十分なドキュメントもノウハウも残されておらず、移管を担うパートナー探しは難航した。その局面で声がかかったのがアルネッツだった。複数社・約100名が関わる体制のなか、要件定義から設計・実装・テスト・運用までを担い、約1年で移管を完遂した。
企業再編に伴う新会社設立を契機に、既存の大規模業務システムの移管プロジェクトが立ち上がった。ドキュメントがほぼ存在しない状況での全工程対応と、5〜6社・約100名規模の多国籍チーム統括という困難な条件のなかで、アルネッツは15名のエンジニアを投入し、要件定義から保守運用まで一貫して担当。約1年でシステム移管を完了させ、現在も現場を継続支援している。
背景——新会社設立と、動かなければならないシステム
ある企業グループの再編によって、新しい会社組織が立ち上がることになった。経営統合や分社化といった大きな組織変革は、単に法人格の整理にとどまらない。新会社が独自の業務基盤を持つためには、既存の業務システムを丸ごと移管し直すという、複雑な作業が不可欠だった。
対象となる業務システムは、長年にわたって別組織のもとで運用されてきたものだ。新会社の業務フローに合わせながら、システムを安定稼働させ続けなければならない。「移管」という言葉は簡潔に聞こえるが、その実態は基幹系業務の継続性を担保しながら、システムの根幹を別の組織に引き渡すという、綱渡りの作業にほかならない。
課題——「引き継げる状態ではない」システムの実態
プロジェクトチームが最初に直面したのは、システムそのものよりも、その「見えなさ」だった。長年の運用の積み重ねの中で、本来あるべきドキュメントの多くが整備されておらず、システムの全体像を把握することすら容易ではない状態だった。
- ドキュメントがほぼ存在しない。設計書・運用手順書・システム構成図——いずれも断片的にしか残されておらず、「動いているのは分かるが、なぜ動いているのかが分からない」という箇所が随所に存在した。
- 運用ノウハウが属人化している。特定の担当者の経験と記憶に依存する形で運用が成立しており、それを体系的に引き継ぐ手段が確立されていなかった。
- システムの全体像が把握しづらい。複数のサブシステムが複雑に連携しており、どのシステムがどのビジネスプロセスに影響を持つのかを特定するだけでも、相応の調査が必要だった。
こうした状況では、パートナー企業を探すこと自体が困難だった。通常、システム移管プロジェクトでは既存の設計書や仕様書が判断材料になる。しかし今回はその前提が成り立たない。受け入れ側に高い探索力と不確実性への耐性が求められるこのプロジェクトに、手を挙げる企業はなかなか現れなかった。
プロジェクトの難しさ——規模・多様性・複雑な連携
ドキュメント不足という「見えない敵」の他にも、このプロジェクトには構造上の難しさが幾重にも重なっていた。
- 約100名規模の統合チーム。単一の企業内プロジェクトとは異なり、異なる文化・慣行を持つ100名近くの人員が一つのプロジェクトに集結するため、コミュニケーションコストと調整の複雑さが飛躍的に増す。
- 5〜6社のパートナー企業が連携。各社がそれぞれ得意領域を担う一方で、担当領域の境界では必ず調整が発生する。責任の所在を明確にしながら、全体の整合性を保つマネジメントが求められた。
- 多国籍チームによるプロジェクト推進。日本語を母国語としないメンバーも含む多国籍構成であり、技術的な議論だけでなく、認識の共有や意思疎通の設計にも細心の注意が必要だった。
- 複雑なシステム連携の調整。複数のシステムが相互に依存しているため、一つの変更が他のシステムに波及するリスクを常に管理しながら進める必要があった。移管先での動作を保証するためのテスト設計の精度が、プロジェクト全体の品質を左右した。
アルネッツ参画——「あの会社なら対応できる」という信頼
複数のパートナー候補が見送りを判断するなかで、アルネッツに声がかかったのは「この状況でも対応できる会社」という評価があったからだ。過去のプロジェクトを通じて積み重ねてきた実績と、困難な局面でも粘り強く対応してきた姿勢が、今回の選定につながった。
「とにかくどうにかしてもらえるなら——そういう局面でも諦めずに動いてくれる会社を探していた。」
プロジェクト関係者の声(要約)「やれるかどうか分からない」という不確実性を前にしても、現場で判断しながら前に進む——そのスタンスがアルネッツへの期待の背景にあった。技術力だけでなく、局面に応じた柔軟さと推進力が評価された形だ。
実行——要件定義から保守運用まで、全工程をカバー
アルネッツは15名のメンバーを投入し、プロジェクトの主要工程を一貫して担当した。チームは5つの混合チームのひとつとして機能しながら、開発作業にとどまらずチーム間の技術調整や情報連携の橋渡し役も担った。
特に上流工程では、ドキュメントが存在しない箇所について、ステークホルダーのヒアリングを重ね、暗黙知をできる限り明文化していき既存システムの動作を直接解析しながら仕様を逆引きするアプローチを取った。この初期フェーズの精度がプロジェクト全体の品質を決定する。
設計・実装フェーズでは、他社チームとの技術的整合性を確保しながら開発を進めた。システム連携部分では特に、互いのインターフェース仕様を丁寧に確認し合い、認識齟齬が後工程に持ち越されないよう管理した。
プロジェクト現場——クライアント拠点近くで、約1年を過ごす
プロジェクトはクライアントの社内で実施され、アルネッツのメンバーは近郊に長期滞在した。他社のエンジニアや海外から参加した開発者、クライアント側のシステム担当者と日常的に顔を合わせながら開発を進めた。会議室では複数言語の議論が交わされ、ホワイトボードには英語と日本語が混在するシステム構成図が描かれていた——そんな光景が、この現場の日常だった。
異なるバックグラウンドを持つメンバーが集まることで、言語の壁だけでなく、開発プロセスや品質基準に関する「当たり前」の違いが随所に現れた。どちらが正しいという問題ではなく、このプロジェクトにとって何が必要かを一つずつ合意し直す作業が、調整の大半を占めた。
5〜6社が協力するプロジェクトでは、チーム間の調整コストが想定外に膨らむことがある。あるチームの進捗がボトルネックになると、他のチームの作業が連鎖的に止まる。アルネッツのメンバーは自チームの開発を進めながら、こうした全体の流れを把握し、必要に応じて声を上げる役割も担った。
「開発者として参画しているが、現場のコンディションを保つことも仕事の一部だ」——そういう意識でプロジェクトに向き合えるかどうかが、この種の大規模連携プロジェクトでは問われる。
結果——約1年での移管完了と、継続する現場支援
プロジェクト開始から約1年後、業務システムの移管は完了した。新会社の業務基盤として、システムは安定稼働を開始した。
ドキュメント不足という困難な出発点から、約1年で全工程を完了。新会社の業務基盤として本番稼働を実現した。
移管完了後も現場の安定化を支援し、その後も継続的なフォローにより安定した運用体制を確立した。
「フットワークが軽い」「困っているときに助けてくれる」——現場での信頼関係が、長期の常駐継続につながっている。
5チーム・5〜6社が連携する複雑な体制のなかで、アルネッツは技術と調整の両面でチームの推進力を支えた。
「移管が完了したら終わり」ではない。システムが新しい組織に根付くためには、稼働後の安定期においても継続的な支援が必要だ。アルネッツのメンバーがプロジェクト後も現場に残り続けているのは、技術力だけでなく、現場との信頼関係があってのことだ。
学び——「困っている人がいれば、動く」という価値観
このプロジェクトは、アルネッツの仕事に対する姿勢を端的に示す事例だと、私たちは考えている。誰もやりたがらなかった案件に手を挙げ、ドキュメントがない状態から仕様を掘り起こし、多国籍・多社連携という複雑な環境の中で約1年間を走り切った。
「困っている人がいたら協力したい」——これはきれいごとではなく、実際の行動規範だ。技術的に難しいから、条件が整っていないから、という理由で動かないのではなく、「何ができるか」を考えながら現場に入っていく。そのスタンスが、今回のような案件での選定理由につながっている。
難しいプロジェクトほど、現場に寄り添える人間がいるかどうかが問われる。技術は必要条件だが、それだけでは足りない。
ITプロジェクトの難しさは、技術仕様の複雑さだけにあるのではない。人が集まり、組織が絡み合い、それぞれの事情や優先順位が交錯するなかで、それでも前に進める力——そこにこそ、パートナー企業を選ぶ本当の判断基準があると、私たちは考えている。