INSIGHT
学校のAI活用、何から分けて考えるか——校務・教材・学習の入口
校務・教材・学習で確認が違う中、何を分けて相談すればよいか。
行事の案内文を書いたり、授業の問題を考えたりしていて、「ここにAIを使えないだろうか」と思う。でも、学校のどこへ聞けばよいのか分からない。自分が下書きに使う話と、児童生徒が授業で使う話も、一緒になってしまう。そんなところで、相談をためらうことがあるかもしれません。
詳しい用語から始める必要はありません。まず、誰が、何を楽にしたいのか、何を入力するのか、できたものを誰が確かめるのかを一つずつ聞きます。校務、教材づくり、児童生徒の学習を分けるだけで、質問する相手と確かめることが見えてきます。
「学校で使う」を三つに分けてみる
一つ目は、教職員の校務です。保護者への連絡文の下書き、会議資料の要約、行事案内の案など、先生や職員が仕事を進めるために使います。ここでは、児童生徒や家庭の情報を入力してよいか、文章を誰が確認して送るかが気になります。
二つ目は、教材づくりです。練習問題の案、説明の言い換え、授業の流れを考える助けにします。学年や授業のねらいに合うか、事実に誤りがないか、使った資料を確かめられるかを教員が見ます。
三つ目は、児童生徒自身の学習です。考えを広げる、分からない言葉を尋ねる、文章へ意見をもらうなどの使い方があります。何を自分で考える時間にするか、AIの答えをどう確かめるか、提出物での扱いをどう説明するかを決めます。
同じ画面を使っていても、目的と確認者は違います。「学校全体で使えるか」を一人で判断しようとせず、自分が相談したいのはどの一件かを先に分けます。
分からないことを、四つの質問に変える
専門用語が出てきたら、次の四つへ言い換えられます。
- 誰が使いますか。
- 何をしたいのですか。
- 何を入力しますか。
- できたものを誰が確かめますか。
たとえば「学級だよりの案を作りたい」なら、教員が使い、文章の下書きを作り、個人が分かる情報は入れず、担任と決められた確認者が原稿を見る、と具体化できます。「児童が調べ学習で使いたい」なら、対象学年、学ぶねらい、利用する時間、答えの確かめ方、困ったときの先生を考えます。
分からない回答が返ってきたら、その場で理解したふりをしなくてかまいません。「児童の名前は入りますか」「作った文章はどこに残りますか」「間違いは誰が直しますか」「使わない方がよい時は誰が決めますか」と、学校の言葉で聞き直します。
良い質問は技術に詳しい質問ではなく、教室や職員室で誰が困るかを確かめられる質問です。
利用条件を確かめてから、小さな一件を最後まで試す
最初から全校で使う必要はありません。まず校内の情報担当などへ、学校で使えるサービスとアカウント、入力してよい情報を確認します。公開情報を使う教職員の試行も、学校の利用条件を省いてよいという意味ではありません。
条件を確認できたら、校務なら行事案内の下書きなど、範囲の分かりやすい一件を選びます。入力する情報を確かめ、出力を元資料と比べ、直した箇所を残し、送信前の確認まで通します。教材や児童生徒の活動も、それぞれの利用条件を確認したうえで検討します。
教材なら、教員が一つの問題案を作り、学習のねらい、難しさ、正答、表現を確認します。児童生徒の学習なら、AIの答えをそのまま提出する活動ではなく、教科書や別の資料と比べ、違いを話せる短い活動から試せます。どの方法が適切かは、学年、教科、児童生徒の状態、学校方針に合わせて教員が判断します。
児童生徒が使うサービスを選ぶ前には、「この年齢で使えるか」「保護者への説明や同意は何が必要か」も、管理職や情報担当へ相談します。短い試行なら利用条件を省いてよい、という意味ではありません。子どもが自分でアカウントを作ることを、活動の準備として先に進めないようにします。
試した後は、「便利だった」だけで終えません。入力で迷ったこと、見つかった誤り、確認にかかった時間、児童生徒から出た質問を記録します。担当教員、管理職、情報担当、必要に応じて教育委員会や保護者と、次に続ける範囲を話します。
文部科学省の資料も、学校の会話の出発点
文部科学省は2024年12月26日、初等中等教育段階における生成AIの利活用に関するガイドライン Ver.2.0 を公表しました。教職員や教育委員会などを主な読み手とし、校務での利用と児童生徒の学習での利用を分けています。校務では教職員が内容を判断できる範囲、学習では発達の段階や情報を使う力への配慮を挙げています。
このガイドラインは、学校での利用を一律に禁止したり義務付けたりするものではありません。AIを使えば学習成果が必ず上がると証明する資料でもありません。学校と教育委員会は、自分たちの方針、情報の扱い、対象学年、授業のねらいに照らして決めます。
相談先も一人に集めません。授業のねらいは担当教員や教科の責任者、個人情報や端末は校内の情報担当と教育委員会、学校全体の方針は管理職へ聞きます。児童生徒と保護者には、何のために使い、困ったとき誰へ言えるかを分かる言葉で伝えます。
「使ってよいですか」で終えず、どの場面で、何を入れ、誰が確かめ、困ったら誰に聞くかを相談します。
校務・教材・学習を分け、試す前の一件を相談する
AIについて詳しくないと、質問すること自体をためらうかもしれません。でも、学校で必要な判断の多くは、普段から大切にしていることへ戻せます。子どもは何を学ぶのか。誰の情報を扱うのか。できたものを誰が確かめるのか。困ったとき、誰が話を聞くのか。
まずは「教職員が行事案内の下書きに使いたい。児童生徒の情報は入れず、元資料との照合は自分で行いたい。この用途で使えるサービスと、確認が必要なことを教えてください」と、校内の窓口へ聞いてみます。授業での利用を考えているなら、学年と学習のねらいも添えます。試す前の一件が説明できれば、学校に合う条件を一緒に考えられます。