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自治体の生成AI活用——制度の案内と、個別の受給・許可判断を分ける
一般案内で答える範囲と、職員が個別に確かめる範囲をどう分けるか。
住民が案内画面に「今年、子育て世帯向けの給付を受けられますか」と入力した。AIは対象者の条件を分かりやすく説明したが、住民の住所、世帯、所得の扱い、申請時期、必要書類は確認していない。それでも住民には、自分が対象だという回答に見えることがあります。
制度を説明することと、一人ひとりの受給や許可を決めることは別の業務です。案内AIには自治体、制度年度、根拠資料、確認していない条件を示し、個別判断は職員へ確実に渡します。
同じ制度名でも、自治体と年度を確認する
国の制度を自治体が案内する場合も、自治体独自の制度を扱う場合もあります。制度名だけでは、対象地域、受付期間、申請方法、参照する要綱や案内が決まりません。制度担当は、正式名称、対象自治体、年度、受付期間、原資料、更新日を一組で管理します。
自分で見られる回答と表示から確認し、設定側は担当へ渡します。Web担当とシステム担当は、回答から原資料を開けるか、終了した制度が検索結果へ残っていないかを確認します。年度替わりや制度改正では、新旧の案内を見分け、いつの質問へどちらを使うかを制度担当が決めます。
公開前の確認では、制度担当が普段受ける質問を基に、個人を特定しない架空の相談を用意します。申請開始前、締切後、転入直後、昨年度の案内を見た住民からの質問など、時点が答えを左右する例を含めます。正しい説明だけでなく、今は申請できない理由と次に確認する日を案内できるかも見ます。
AIが他の自治体の情報を拾った場合も、似た条件だからと混ぜません。該当自治体の資料で確認できない内容は、その旨と問い合わせ先を示します。
一般案内で答える質問と、職員へ渡す質問を決める
受付場所、公開されている必要書類、申請の手順などは、原資料の範囲で一般案内にできます。一方、「自分は対象か」「例外が使えるか」「書類が足りなくても認められるか」には、本人の事情と制度上の判断が必要です。
制度担当と窓口職員は、AIが案内できる範囲と、人へ渡す条件を質問例で合意します。不足する個人情報を会話の中で次々に集める前に、入力してよい情報と、正式な申請・相談で確認する情報を分けます。職員へ渡す際は、住民が入力した全文を無条件に共有せず、必要な範囲と方法を情報管理担当が決めます。
緊急性がある相談、生活上の困難がうかがわれる相談、複数制度にまたがる相談は、一般説明を続けるより適切な窓口へ案内します。どの言葉や状況で引き継ぐかは、制度担当と相談窓口が決めます。
分からない個別条件を会話で推測せず、「ここからは職員が確認する」と住民にも分かる形で切り替えます。
職員が受け取るのは、結論ではなく確認事項
引き継ぎ画面にAIの「対象です」「対象外です」という結論だけが残ると、職員もその前提に引かれます。住民の質問、案内した制度、参照資料、確認済みの事実、不足情報を分けて渡します。職員は正式な申請情報と原資料に基づき、必要な手順で判断します。
住民へは、AIによる一般案内であること、個別判断が完了していないこと、次に必要な手続や相談先を伝えます。職員へつないだ後も、受付番号や次の連絡時点を示し、同じ説明を何度も求められないようにします。
相談を受け付けたことと、正式な申請を受け付けたことも区別します。AIへ事情を入力しただけで申請済みと思われないよう、今どの手続まで終わり、何が残っているかを示します。締切が近い場合は、回答を待つだけの状態にせず、制度担当が確認した正式な提出方法と相談先を案内します。
住民が画面を使えない、質問を文章にしにくい、案内を読んでも次の行動が分からない場合もあります。電話、窓口、支援者を通じた相談など既存の経路を残し、AIの利用を制度へたどり着く唯一の入口にしません。
制度の適用や受給・許可の可否は、それぞれの法令、条例、要綱、事実関係によって決まります。本稿の区分は個別の行政判断を代替するものではありません。自治体の制度担当、法務、情報管理が、自団体の手続へ落とします。
国のガイドラインは、自治体の一律ルールではない
デジタル庁は2026年6月12日、生成AIの調達・利活用に係るガイドライン第2.0版 を公表しました。この文書は国の各府省庁を対象とし、業務の性格、利用範囲、人の判断を経るかなどに応じてリスクを評価する考え方を示しています。
地方公共団体へ同じルールを一律に課す文書ではありません。自治体が参考にする場合は、自団体の条例、規程、情報システム、調達条件、住民窓口へ改めて対応させます。「国のガイドラインに沿った」という説明だけで、個別制度の案内内容や情報の扱いが適切だとは決められません。
試行では、制度担当、窓口職員、Web・システム、情報管理、法務が、旧年度、他自治体、情報不足、例外相談を含む質問を通します。利用開始は回答の流暢さではなく、制度の版を示し、個別判断を職員へ渡し、住民へ次の行動を案内できたかで決めます。
制度の一般案内と個別判断を分け、住民が次に相談できるところまでつなぐ
自治体の案内AIは、制度を探す入口を分かりやすくできます。その入口が個別判断のように見えると、住民は申請や相談の機会を失うかもしれません。
自分が担当する制度一つについて、通常の案内と、個別判断が必要な質問を用意してみてください。架空の相談で自治体・年度・根拠・切替先を確かめ、不明な適用条件は制度担当へ渡します。住民が次の手続へ進めるかまで確認した結果を、公開と運用の判断につなげます。