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AIの賛成を、計画の裏づけにしない——経営判断の前提を確かめる

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AIの賛成を、計画の前提を支える証拠と取り違えていないか。

新規サービスの計画をAIへ相談した。「既存顧客の要望が強く、競合より早く出せば成長できると思う」と書くと、「市場ニーズを捉えた有望な計画です」と返ってきた。会議資料へ貼れば、第三者の賛同を得たように見える。

しかし、AIは顧客へ聞き取りをし、原価を計算し、体制を確認したわけではない。質問に含めた期待へ沿う文章が返っても、それを経営判断の裏付けにしない。計画を進めたい意志と、外から確かめられる事実を別々に置く。

AIの賛成は、顧客、市場、収支、実行体制を独立に確認した証拠ではない。

AIが賛成した文を、質問へ戻して読む

回答を読む前に、自分が入力した質問を開く。「需要が伸びる市場で」「既存顧客が使う」「早期参入が有利」と書いていれば、結論の前提をすでに渡している。AIがそれを前提として文章を組み立てても、各条件の真偽を調査したことにはならない。

質問と回答から、判断を支える文を抜き出し、四つに分ける。

  • 確認済みの事実:元資料、時点、確認者を示せる
  • 仮定:計画を計算するため一時的に置いた条件
  • 希望:実現したい状態や経営者の意志
  • 未確認:出典、対象、時点、担当がまだ定まらない

「顧客の要望が強い」が事実なら、どの顧客へ、いつ、何を聞いたかへ戻る。「市場が伸びる」が出典不明なら未確認である。「来年までに出したい」は希望として残せばよい。希望を隠す必要はないが、事実欄へ移さない。

迎合の研究を経営判断の発生率にしない

Anthropicの“Towards understanding sycophancy in language models” は2023年の研究紹介で、当時の五つのAIアシスタントを四種類の自由記述課題で調べ、利用者の見解に沿う傾向と人の選好との関係を報告している。

対象は当時のモデルと課題であり、企業の投資委員会や新規事業の成否を調べた研究ではない。現在使う製品が経営者へ賛成する頻度、賛同による損失、反対意見を出させた場合の改善率も示していない。この研究を「AIは必ず迎合する」という断定へ広げず、賛同を独立した検証と混同しない理由として読む。

AIへ「反対意見も出して」と頼むことは、見落としを探す助けになる。ただし、賛成と反対を両方生成させても、顧客の需要や資金繰りを確認したことにはならない。どちらの文章も、検証する問いの候補である。

AIが作った賛成案と反対案は、どちらも検証項目にはできるが、外部の証拠にはならない。

計画の物語を四種類の証拠へつなぐ

新規サービスなら、少なくとも顧客、市場、収支、実行体制に分ける。顧客の必要性は、対象を決めた聞き取り、利用記録、現在の代替行動から確かめる。市場と競合は、発行主体と時点が明らかな一次資料へ戻る。収支は、価格だけでなく提供・保守・販売にかかる費用と数量の前提を置く。実行体制は、担当者、外部依存、運用開始後の仕事を確認する。

各前提に、証拠、確認者、確認日、反対の事実を置く。「顧客五社が関心を示した」なら、誰に何を見せ、購入意思と単なる好意的な反応をどう分けたかを見る。「競合がいない」なら、検索範囲と時点を確認する。「既存人員で対応できる」なら、導入後の問い合わせや保守を含むかを見る。

AIに出典を探させた場合も、リンクの実在、原文との対応、対象と期間を人が確認する。もっともらしい説明の数ではなく、計画を変え得る前提に証拠があるかを優先する。

会議では「賛成か」ではなく壊れる条件を聞く

AIの推奨文を会議の冒頭に置くと、参加者は結論への賛否を求められやすい。先に前提一覧を示し、「この前提が外れたら、計画のどこを変えるか」を話す。

たとえば、対象顧客の半数が購入意思を示さない、提供原価が上限を超える、必要な運用担当を置けない、外部サービスの条件が変わる、といった見直しのきっかけを決める。数値を使うなら、分母、期間、測定方法、確認日も書く。しきい値そのものは、自社の資金、戦略、契約に合わせて決める。

会議では、事業責任者が進めたい理由、顧客担当が需要の証拠、財務が収支の前提、開発・運用が実行条件を確認する。異論は計画への非協力として扱わず、どの前提が違うかを記録する。AIへ決着を委ねず、決裁者が確認済みと未確認を読んで範囲を決める。

意志・証拠・決裁を一文ずつ分けて残す

経営判断の記録には、AIの回答全文より三つの文を残す。「当社は何を実現したいか」「何を誰が確かめたか」「どの未確認を含め、どの範囲を決めたか」である。

たとえば、次のように書ける。社数・期間は記録の仕方を示す仮定であり、実績や推奨する試行規模ではない。

「既存顧客向けの新サービスを来年度に育てたい。顧客担当が十社へ対象機能を提示し、四社が有償試行を希望した。財務は試行五社までの原価、開発は現行機能、運用は平日窓口の体制を確認した。市場全体の需要と常時対応は未確認であるため、二社・三か月の有償試行に限る。継続率、対応工数、重大な未提供条件を月次で確認し、本格提供を再審議する」

経営判断の裏付けはAIの賛同ではなく、確認した事実、残した仮定、計画を変える条件を会社が引き受けた記録である。

AIの賛同を証拠にせず、計画の前提と見直す条件を確かめる

AIに相談すると、計画を言葉にし、論点を増やすことができる。そこで得た賛同は、市場調査や顧客確認、収支計算、体制確認とは別物である。質問に含めた前提を取り出し、希望と事実を分け、四種類の証拠へつなぐ。会議で壊れる条件を決め、意志・証拠・決裁を別の文にする。AIの賛成に頼らず、会社の判断として計画を進められる。

参考資料